そうしつ:アトラ・ラッ・クル伝 // upas cironnup -ゆききつね-

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ゆききつねいのち:アトラ・ラッ・クル伝 > 1. そうしつ

そうしつ

私の翼が折れてしまった。
もう、元には戻らない。
もう、二度と空を飛ぶことは出来ない・・・・・・。


暗闇の中、一人でうずくまる。
頭の中にひとつの文字が浮かんできた。
「死」
そばにあった剣を持ち、首筋にそれをあてる。
力を込める。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
手から剣が、目から涙がこぼれ落ちた。


少しだけ不便な生活が始まった。
・・・・・・・私はまだ死んでいない。
・・・・・・・私はまだ生きているから。
・・・・・・・まだやっていける!





人とすれ違う。
翼を持った人とすれ違う。

人と話をする。
翼を持った人と話をする。

人とつきあう。
翼を持った人とつきあう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
翼を持っていないのは、私だけ・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

折れた翼が痛かった。
人が私を見下す視線が痛かった。

人が私を哀れむ視線が・・・・・・・・・・・痛かった。


気が付けば手に剣を握っていた。
それを振りかざす。
そして・・・・・・・・・・・。
力を込めて振り下ろす!

かつての弱い私に振り下ろした!



ほんの少しだけ不便な生活が始まった。
でも、私はまだ死んでいない。
でも、私はまだ生きている。
だから、まだやっていける!

「いのち」は傷ついて、強くなっていくものだから。





今日は一年に一度の「聖なる日」
夜、きれいな服を着て神様のいる空に向かってみんなで楽しく飛ぶ日。
みんな、きれいな服を着て。
みんな、一緒になって。
みんな、楽しそうに。
みんな、空を飛んでいる。

・・・・・・・・私以外のみんな。




「一緒に行こう!」
上から声が聞こえてきた。
私の友達。
「ほら、手をつないで!」
私が手をつなぐと、友達は私の手を引っ張り、空へ飛び立った。

私は今、空を飛んでいる。

とても、きれいだった。
とても、うれしかった。




私の話を聞いている人たちよ。
どんなに苦しくても、今この瞬間を生きていることを忘れないで。
誰かが必ず、あなたを見ているから。