そら:アトラ・ラッ・クル伝 // upas cironnup -ゆききつね-

upas cironnup -ゆききつね-

ショートカットメニュー

ゆききつねいのち:アトラ・ラッ・クル伝 > 3. そら

そら

月が出ている。
まんまる満円。
それから黒い雲が流れてきて、それが地上を照らす光を遮った。
そんな空を、翼を震わせながら飛んでいた。
私が行くことの出来る限界の高さまで。


足元を見下ろせば、ニンゲンたちの作り出す光が見える。
それを見るだけで、辛く苦しく不快な気分になっていく。
すぐに目を黒い空へと戻す。

耳を澄ませば、風に乗って喧騒が聞こえる。
それを聞くだけで、もわもわで吐き気がしてくる。
すぐに耳をふさいだ。


私はこの世界に何を望んでいたんだろう。
このまま月へ行っちゃえば、それが分かるのかな?

冬の冷たい風が、静かに吹く。
このままぼーっとしてれば、本当の風になれるのかな?


羽ばたく力も、気力すらも消えかけていた。
今、これをやめたらどうなるんだろう?


・・・・・・・・・・・・・・・・。
体が静かに落下を始めた。

全身に叩きつける風が気持ちよかった。
静かに目を閉じ、その快感に身を任せてみる。



風の中に、何かがある・・・・・・。

いろいろな形。

 まる。
  しかく。
   さんかく。
    ゆるやか。
     とんがってる。


たくさんの色。

 あか。
  きいろ。
   むらさき。
    ちゃいろ。
     きらきらひかる。
      いろいろまざったかんじ。


違ったものばっかり。

・・・・・・・・・・これが、世界。

・・・・・・・・・・・・・・・・・。
そういえば、そうだったかな・・・・・・・・。


凍りついた翼をゆっくりと広げる。

 私だけの形。
  私だけの色。

    世界に灯る。



空を見てみたら、雲が晴れていた。
まんまる満月。
なんとなく、表情が違うような感じがした。







・・・・・・・・えっとね。
世界には、いろいろなモノがあってね。
うーんと、好きなもの嫌いなものとかもあるけどね。
でもっ、存在そのものを否定しちゃ駄目だよ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
どんなに嫌いでもね・・・・・・・・・。
みんな、信じているモノが違うから・・・・。
君が嫌いでも、他のみんなはどうか分からないから。