例えば、一望:最果ての卵 // upas cironnup -ゆききつね-

upas cironnup -ゆききつね-

ショートカットメニュー

ゆききつねいのち最果ての卵 > 37. 一望

例えば、一望

これから始まるは、たとえばのお話。





一人の少年が、静かに眺めていました。

もう、どれくらいの間、こんなことを繰り返してきたのか。
遠くから、ただ眺め続けるだけ時間。

まばゆい光が溢れ、人々の喧騒で賑わう街。
暖色のあかりの中で、あたたかい雰囲気に包まれた家庭。


少年のそばには誰もいません。
静寂だけが、ひっそりと付き添っています。

人々が見たら、きっとそれは「寂しい」と呼ばれるでしょう。
しかし少年は、それしか知らないので、寂しいというのがよく分かりません。

少年のそばに、星が数粒生まれました。
そして遠くへ流れていきました。

人々が見たら、きっとそれは「涙」と呼ばれるでしょう。
しかし少年は、ただ、綺麗だなと思うだけでした。


これからも、きっと続いていくのだろう。
遠くから、ただ眺め続けるだけ時間。

光あふれる世界を。
その影から。

一人の少年が、静かに眺めていました。





――――たとえばのお話、おしまい。