私の翼が折れてしまった。 もう、元には戻らない。 もう、二度と空を飛ぶことは出来ない・・・・・・。 暗闇の中、一人でうずくまる。 頭の中にひとつの文字が浮かんできた。 「死」 そばにあった剣を持ち、首筋にそれをあてる。 力を込める。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 手から剣が、目から涙がこぼれ落ちた。 少しだけ不便な生活が始まった。 ・・・・・・・私はまだ死んでいない。 ・・・・・・・私はまだ生きているから。 ・・・・・・・まだやっていける! 人とすれ違う。 翼を持った人とすれ違う。 人と話をする。 翼を持った人と話をする。 人とつきあう。 翼を持った人とつきあう。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 翼を持っていないのは、私だけ・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 折れた翼が痛かった。 人が私を見下す視線が痛かった。 人が私を哀れむ視線が・・・・・・・・・・・痛かった。 気が付けば手に剣を握っていた。 それを振りかざす。 そして・・・・・・・・・・・。 力を込めて振り下ろす! かつての弱い私に振り下ろした! ほんの少しだけ不便な生活が始まった。 でも、私はまだ死んでいない。 でも、私はまだ生きている。 だから、まだやっていける! 「いのち」は傷ついて、強くなっていくものだから。 今日は一年に一度の「聖なる日」 夜、きれいな服を着て神様のいる空に向かってみんなで楽しく飛ぶ日。 みんな、きれいな服を着て。 みんな、一緒になって。 みんな、楽しそうに。 みんな、空を飛んでいる。 ・・・・・・・・私以外のみんな。 「一緒に行こう!」 上から声が聞こえてきた。 私の友達。 「ほら、手をつないで!」 私が手をつなぐと、友達は私の手を引っ張り、空へ飛び立った。 私は今、空を飛んでいる。 とても、きれいだった。 とても、うれしかった。 私の話を聞いている人たちよ。 どんなに苦しくても、今この瞬間を生きていることを忘れないで。 誰かが必ず、あなたを見ているから。