こどく:アトラ・ラッ・クル伝 // upas cironnup -ゆききつね-

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ゆききつねいのち:アトラ・ラッ・クル伝 > 2. こどく

こどく

ぼくは大きな家に住んでいる。
とても、とても、大きな家だ。
いつものように、広くて暗い家の隅で、一人丸くなる。
ぼく以外、ここには何も無い。


ぱちっ。

暖炉の火が静かに燃えている。
いつものように、その前で、一人食事を取る。
静かだった。
炎のはじける音が、唯一ぼくの耳に入ってくる。

ぱちっ。

闇。闇。暗い闇。
何も無い空間。
何かが足りない、そんな気がする。


冷たい空気がまわりに漂っている






ざわざわっ。

獣たちの声が聞こえる。
いつものように、この森の中で、一人狩りをする。
今日は、全然だめだった。
しかし、ぼくの腰には一匹の獲物がぶら下がっている。

どきどきっ。


静寂を声が打ち消す。
彼は微笑んだ。
そして、ぼくに獲物を差し出す。


暗い闇の中で、木ぎれをみつけた。







わいわいっ。

村人たちが賑わいでいる。
いつものように、祭りの中で、一人ぼーっとする。
村人が話し掛けてくる。
何気ない会話。

わいわいっ。


今まで、他の人と会話したことが無かった。
だから、気持ちをうまく言葉に出来なかった。
・・・・・・・・・・・・・でも。


木ぎれに灯りをともした。







らんらんっ。

祭りが最高潮に達している。
いつもの違って、輪の中で、みんなと踊っている。
見よう見まねで。
村の北から、村の南まで、必死で踊っていた。
6つの夜、6つの昼の間、楽しく踊っていた。

らんらんらんっ♪


それは、小さな勇気。
それは、大きな喜び。

「・・・・・・・・・・・あの、一緒に踊っても良いですか?」


木ぎれが世界を照らし出す!





ここにいる人たちへ。
他の人との絆も、結構いいものだよ。
ぼくが保障するよ!
困ったとき、必ず君の手助けをしてくれるよ。
嬉しいとき、必ず君の周りにみんながいるよ。