月が出ている。 まんまる満円。 それから黒い雲が流れてきて、それが地上を照らす光を遮った。 そんな空を、翼を震わせながら飛んでいた。 私が行くことの出来る限界の高さまで。 足元を見下ろせば、ニンゲンたちの作り出す光が見える。 それを見るだけで、辛く苦しく不快な気分になっていく。 すぐに目を黒い空へと戻す。 耳を澄ませば、風に乗って喧騒が聞こえる。 それを聞くだけで、もわもわで吐き気がしてくる。 すぐに耳をふさいだ。 私はこの世界に何を望んでいたんだろう。 このまま月へ行っちゃえば、それが分かるのかな? 冬の冷たい風が、静かに吹く。 このままぼーっとしてれば、本当の風になれるのかな? 羽ばたく力も、気力すらも消えかけていた。 今、これをやめたらどうなるんだろう? ・・・・・・・・・・・・・・・・。 体が静かに落下を始めた。 全身に叩きつける風が気持ちよかった。 静かに目を閉じ、その快感に身を任せてみる。 風の中に、何かがある・・・・・・。 いろいろな形。 まる。 しかく。 さんかく。 ゆるやか。 とんがってる。 たくさんの色。 あか。 きいろ。 むらさき。 ちゃいろ。 きらきらひかる。 いろいろまざったかんじ。 違ったものばっかり。 ・・・・・・・・・・これが、世界。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・。 そういえば、そうだったかな・・・・・・・・。 凍りついた翼をゆっくりと広げる。 私だけの形。 私だけの色。 世界に灯る。 空を見てみたら、雲が晴れていた。 まんまる満月。 なんとなく、表情が違うような感じがした。 ・・・・・・・・えっとね。 世界には、いろいろなモノがあってね。 うーんと、好きなもの嫌いなものとかもあるけどね。 でもっ、存在そのものを否定しちゃ駄目だよ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・。 どんなに嫌いでもね・・・・・・・・・。 みんな、信じているモノが違うから・・・・。 君が嫌いでも、他のみんなはどうか分からないから。