僕は、ひとりぼっちです。 大きくて静かな家の中で、ひっそり暮らしています。 何故、このようになってしまったのか。 何故、というのは難しいから、どうして、と命題を変えます。 結果から言えば、家族は全員死んでしまったのです。 病気や事故など、様々な原因があります。 そして、僕はひとりぼっちになりました。 食料を探しに出かけると、ある家族に出会いました。 大人の男と女。 子供の男と女。 皆、仲良く楽しそうにしています。 その表情は、誰もが一つの単語で表現するでしょう。 「幸福」「幸せ」 僕も、そう表現します。 遠い昔に失ってしまったものです。 突然、家族から声をかけられました。 …どうしたんだい? とても、羨ましくて見ていた、とは答えられません。 不思議なことに、心を読まれたのでしょうか。 …家で一緒に食事をしないかい? 僕の望みを叶えてくれると言ってくれたのです。 断る理由は、一つもありませんでした。 ありがたく、その申し出を受けました。 「幸福」「幸せ」 そんな言葉でこの気持ちを表すには、全然足りない。 でも、幸せは目の前にあります。 信じられないけど、現実なのです。 …家族にならないかい? 心臓が飛び出ました。 それは、神様がくれた最高の幸福。 涙が止まりませんでした。 僕の体には、この家族の血は流れていません。 それでも、仲間に加えてもらったのです。 時は流れ、大人の男と女は世界を旅立ちました。 さらに時は流れ、僕も世界を旅立つ時がきました。 子供だった男と女は、僕の亡骸を先祖から伝わる墓に仕舞ってくれました。 どうして、と尋ねます。 …家族だもん。あたりまえだよ。 もし体があれば、体中の水を目から出していたことでしょう。 血筋とか、そういうのは関係ないんだよね。 暖かいものが家族っていうんだよ。 冷たいものは…何ていうんだろうね。 あなたのまわりに、暖かいものはありますか? なければ、探す旅に出ることを勧めるよ。