東方七夕祭 ~ Beautiful Sky With Starry Bullet. -0- 誰かさんの頭の中を除いては、幻想郷から春が過ぎ去った。 やがて湿っぽい空気があたりを包みこんだ。 そんな憂いた季節も、過ぎ去ろうとしていた。 空の向こうには、満天の星空が広がっている、はずである。 -1- 博麗霊夢(はくれい れいむ)は辺境の地から、雲に覆われた空をぼーっと見上げていた。 霊夢「どーして七夕の日って、こうなるのかしらねぇ」 星空を眺めながら、優雅なひと時を過ごそうとしていた霊夢にとって、それは死活問題である。 待てども待てども、晴れる気配はなし。 霊夢「こうなったら、最後の手段しかないか…?」 笹と短冊と筆を持って、博麗神社の遥か上空へ飛び出していった。 -2- 普通の人間らしく、普通に七夕を楽しもうと、霧雨 魔理沙(きりさめ まりさ)は博麗神社にやってきた。 魔理沙「ん、誰もいないのか?」 押入れの中にも、畳の下にも居ない。きっと、これは留守なんだろう。 魔理沙「と、なると………」 空から、ひらひらと笹の葉が落ちてくる。空は曇天、星は見えない。今日は七夕。 これらの状況を踏まえると。 魔理沙「……あっちかな?」 雲のさらに向こうを見つめた。 -3- 紅魔館の住人たちは困っていた。メイドの十六夜 咲夜(いざよい さくや)も、その一人。 咲夜「雲全部を撤去するのは、ちょっと面倒くさいし」 お嬢様の、七夕してみたい、の一言が悩ませていた。 諦める、という選択肢は存在しない。 咲夜「そんなことしたら、屋敷が壊れるかも」 いったい、どうしたものか。妹様が屋敷を壊す様を想像しながら。 そこへお嬢様。みんなで出かけるわ、だそうな。 咲夜「どちらへ?」 人差し指で、上を指すお嬢様。今夜は遠足になりそうだ。 -4- 幻想郷の遥か上空。我こそが一番、と輝き競っている中。 織姫と彦星の、年に一度のデェトをよそ目に。 どんちゃん騒ぎになっていた。 チルノ「一番チルノ、奇跡の蘇生術いきます!」 氷漬けの蛙。ぱりーんと氷が砕け。ひゅ~~~。落下。 レティ「ここが上空だってこと、忘れてない?」 ルーミア「こうしてると、南十字に見えるかな」 パチュリー「そういえば、この本にサザンクロスって呪文が載ってたような」 ルーミア「……私で実験しないでよ」 レミリア「今日のお茶は、何かしら」 咲夜「七夕らしく、日本茶です。もちろん希少品も入ってますよ」 わざわざ持ってきたのか、豪華ティーセット(テーブル・椅子付き)が宙に浮いている。 フランドール「笹にスペルカードを吊るすと願いが叶うのか…」 アリス「人形で飾り付けするのも悪くないわね」 フランドール「首吊り人形(てるてる坊主)は似合わないと思うけど」 中国「どーせ私は中国ですよーだ(いじいじ)」 橙「元気だせ。ねこみみあげるから」 中国「いらない(しくしく)」 霊夢「やーっぱり、こうなっちゃうのね」 魔理沙「嫌か?」 霊夢「…うんにゃ、好きだから困ってる」 魔理沙「あ、妹が暴れだした」 霊夢「げっ」 星空に弾幕が飛び交った夜のこと。 まぁ、それなりに楽しかった七夕のこと。