これから始まるは、たとえばのお話。 あるところに、不慮の事故で体の自由を奪われた少女がいました。 それを不憫に思った誰かが、少女を励まそうと「ある企画」を立てました。 『ぼく達も頑張るから、○○ちゃんも頑張れ!』 そう銘うたれた、バラエティ番組。 テレビ画面の向こうで、必死で走る誰か。 それを見て、頑張れと応援する誰か。 番組の最後で登場する少女。 「頑張ってください」と花束を受け取ります。 一晩経てば、そんな少女がいたことは誰も覚えていませんでした。 所詮はバラエティ番組。 その目的は、一時の楽しみを得ること。 「少女」という存在も、一時の…………。 数日後。 心臓を自ら花で一突きして静かになった少女が発見されました。 あの時渡された花束。 テーブルの上には、ところどころ文字の滲んだ一通の手紙。 ~私が欲しいのは、こんなものじゃない~ たちまち、番組を放送したテレビ会社は非難されました。 少女の心を踏みにじったと言う誰か。 かわいそうだと言う誰か。 必死で謝る誰か。 ――――たとえばのお話、おしまい。