これから始まるは、たとえばのお話。 黒の闇。 荒れ果てた地面。 静寂。 そんな中に、その双子はいました。 孤独。 二人はお互いを抱き合います。 それが唯一の癒し。 荒野の中、二人は静かに眠ります。 一筋の光が登場します。 細い光。 二人を包むには少し弱い光。 だから、一人だけ包まれます。 大きな分岐点。 二人は、別の人生を歩み始めます。 一人は光の道。 もう一人は闇の路。 光は暖かい。 いろいろなものが満ち溢れています。 何もかもを包み込みます。 幸せとは、こういうものなのでしょう。 闇は冷たい。 孤独、何もありません。 手を伸ばしても、空を切るだけ。 不幸とは、こういうものなのでしょう。 二本の人生は正反対。 だから、再び交わります。 光と闇の再開。 そこも、やはり荒野です。 天が裂けます。 地が吼えます。 風が叫びます。 二人は思います。 光の道の私。 望まなくても満たされる道。 誰もが幸せと思える道。 今も大丈夫。 闇の路の私。 望んでも満たされない路。 誰もが不幸と思える路。 ――――助けて。 稲妻が走ります。 それは、一人を貫き通します。 無残な死。 もう一人は無事でした。 やがて巣立ちの時が訪れます。 もう一人の自分のことを思います。 そして翼を広げ。 新しい世界へと旅立ちました。 どうして。 大丈夫のはずだったのに。 ――――。 巣立ち出来なかった光の最期。 どうして。 今まで助けてくれなかったのに。 ――――。 巣立ち出来た闇の最期。 ――――たとえばのお話、おしまい。