例えば、包装:最果ての卵 // upas cironnup -ゆききつね-

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ゆききつねいのち最果ての卵 > 8. 包装

例えば、包装

これから始まるは、たとえばのお話。





高いビルから飛び降りた青年の物語。
たった一人の存在にしたかったけど。
それは叶わない。
故に、この世界を去った。

列車に跳ね飛ばされた少女の物語。
世界にメッセージを届けるため。
肉の塊となった。
故に、この世界を去った。

海の中へドライブに行った家族の物語。
世の中はお金がすべて。
それが無くなったら。
故に、この世界を去った。

運が無かった大人の物語。
気まぐれで、いつもと違う道を通った。
そこに、ダンプが飛び込む。
故に、この世界を去った。

許されなかった二人の物語。
現世で叶わぬなら。
来世で叶えてみせよう。
故に、この世界を去った。

勇敢な兵士の物語。
自分の大切なものを守るため。
他人を殺す。
故に、この世界を去った。

電子の海で知り合った顔も知らない人間の物語。
共通点は、ただひとつ。
旅立ちの勇気が欲しい。
故に、この世界を去った。

孤独な子供の物語。
呪われた肉体。
祈れど、天に届かぬ。
故に、この世界を去った。


今日は、そこの「死」をくださいな。
へい、毎度おおきに。

今日も、ショーケースに飾られたそれは売れていきます。





――――たとえばのお話、おしまい。