これから始まるは、たとえばのお話。 かつて、世界に存在する生き物たちは裏表が反対でした。 心と体。 心が外側に、体が内側にあったのです。 そのため、簡単に心に触れることが出来たのです。 動物たちは、文字通り心を合わせて生活していました。 やがてニンゲンという動物が誕生します。 彼らは偉大なるモノを持っていました。 知恵。多種多様な感情。 よりよく生きるために、それを使ってきました。 ニンゲンは世界の支配者になりました。 ニンゲンはお互いの力を恐れ、心を他人に見せることをしませんでした。 しかし、簡単に心に触れられてしまいます。 知られたくなかった感情が公になったとき。 世界の支配者ニンゲンはお互いを傷つけあったのです。 終末に向かっていました。 そこでニンゲンたちは偉大なる知恵を使います。 心と体をひっくり返す。 体を外側に、心を内側に。 そうすれば、余計な争いは避けられるはず。 そう考えたのです。 試みは成功しました。 争いは絶えることは無かったが、なんとか世界は保ちました。 さらに、ニンゲンたちはもう一つの策がありました。 万が一、心を覗かれようとしても大丈夫なように。 心に醜い姿を与えたのです。 臓器。 生理的嫌悪を催すカタチでした。 こうしてニンゲンたちは、比較的穏便な生活を手に入れました。 やっぱり争いは絶えこそしなかったが、平和になりました。 平和になりました。 ――――たとえばのお話、おしまい。