例えば、表裏:最果ての卵 // upas cironnup -ゆききつね-

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ゆききつねいのち最果ての卵 > 9. 表裏

例えば、表裏

これから始まるは、たとえばのお話。





かつて、世界に存在する生き物たちは裏表が反対でした。
心と体。
心が外側に、体が内側にあったのです。
そのため、簡単に心に触れることが出来たのです。
動物たちは、文字通り心を合わせて生活していました。

やがてニンゲンという動物が誕生します。
彼らは偉大なるモノを持っていました。
知恵。多種多様な感情。
よりよく生きるために、それを使ってきました。
ニンゲンは世界の支配者になりました。

ニンゲンはお互いの力を恐れ、心を他人に見せることをしませんでした。
しかし、簡単に心に触れられてしまいます。
知られたくなかった感情が公になったとき。
世界の支配者ニンゲンはお互いを傷つけあったのです。
終末に向かっていました。

そこでニンゲンたちは偉大なる知恵を使います。
心と体をひっくり返す。
体を外側に、心を内側に。
そうすれば、余計な争いは避けられるはず。
そう考えたのです。

試みは成功しました。
争いは絶えることは無かったが、なんとか世界は保ちました。
さらに、ニンゲンたちはもう一つの策がありました。
万が一、心を覗かれようとしても大丈夫なように。
心に醜い姿を与えたのです。

臓器。
生理的嫌悪を催すカタチでした。
こうしてニンゲンたちは、比較的穏便な生活を手に入れました。
やっぱり争いは絶えこそしなかったが、平和になりました。
平和になりました。





――――たとえばのお話、おしまい。