例えば、石化獣:最果ての卵 // upas cironnup -ゆききつね-

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ゆききつねいのち最果ての卵 > 10. 石化獣

例えば、石化獣

これから始まるは、たとえばのお話。





ここに、一匹の獣がいます。
四本の足。
ごつごつした皮膚。
そして、鋭い眼。
全てを石に変えてしまう視線。

獣の目の前に兎が現れました。
現れた瞬間、それは兎で無くなってしまいました。
冷たい兎の彫刻になってしまいました。
視線を合わせただけで、こうなってしまうのです。
獣は、こんな力は要らないと思っています。

たまには誰かとゆっくり話がしたいと思う獣。
今まで一度も叶ったことがない願い。
獣が通った道には、石の彫刻が並んでいます。
つまりは。
そういうことです。

獣の前に猟師の一団が現れます。
彼らは石の能力から身を守るために、機械で獣を見ます。
……悪く思うな。
短い発砲音。
獣は息絶えました。

獣の体液は、難病を治す力があると言われています。
獣の皮膚は、頑丈な鎧になると言われています。
獣の内臓は、とても長寿の秘薬と言われています。
獣は思います。
石の彫刻より、こっちの方が価値がある…と。





――――たとえばのお話、おしまい。