これから始まるは、たとえばのお話。 不治の病と診察されました。 もう俺は終わりだ。 青年は絶望しました。 少しずつ体を蝕む病。 来年の桜は見れないようです。 少しずつ心が蝕まれていきます。 夏がやってきました。 青い空と海。 病のことを少しだけ忘れることが出来ました。 秋がやってきました。 読書に食事に運動に。 病のことを忘れることが出来ました。 冬がやってきました。 こたつに入ってみかんを食べてテレビを見る毎日。 来年の紅白は誰が出るか予想して楽しみました。 春がやってきました。 桜色で道は染まっていました。 何か大切なことを忘れている気がしました。 夏がやってきました。 どうしても思い出せない何か。 大したことではないと思い、真夏の海を楽しみました。 ――――たとえばのお話、おしまい。