例えば、転落:最果ての卵 // upas cironnup -ゆききつね-

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ゆききつねいのち最果ての卵 > 15. 転落

例えば、転落

これから始まるは、たとえばのお話。





少女が生まれました。
男と女が愛し合った結果です。

男と女に溝が出来ました。
そして、それ以降二人は出会うことがなくなりました。

少女は父親を知りません。
知らないので、悲しくもなんともありません。

女に2人目の男が近づいてきました。
女は2人目の男に惚れました。

少女は義父を手に入れました。
その意味は、よく分からないままに。

少女は名前を変えられました。
ただ、煩わしいと感じただけでした。

2人目の男は、2人目の女に近づきました。
そのあたりのことは、少女は詳しく知ることは出来ませんでした。

1人目の女と2人目の女は、争いを始めました。
やはり、少女には詳しく分かりませんでした。

2人目の男は、1人目の女を捨てました。
その影響は、少女にも少しずつ出始めてきました。

少女は、再び名前を変えられました。
ただ、煩わしいと感じただけでした。

少女は自分自身に名前を付けていたので、あまり不自由はありませんでした。
自分の生き方を文字にしたものです。

1人目の女と2人目の男は、毎日戦っていました。
少女は、嫌だなぁと思います。

1人目の女は、捨てられたにも関わらず、2人目の男と共に居ました。
少女にはよく分からなかったが、色々と事情があるようです。

1人目の女と2人目の男の争いは激化していく一方です。
少女は目と耳を閉じ、嵐が去るのをじっと待っていました。

そんな生活は、少女の精神に影響を与え始めます。
じわじわと蝕まれていきます。

やがて1人目の女は、少女に手を出し始めます。
やはり、ただじっと嵐が収まるのを我慢していました。

なぶり殺されるくらいなら自ら命を絶とうと、少女は考え始めます。
様々な書物を漁り、最適な方法を調べました。

最後に遺書と呼ばれるものを書き残しました。
死を選んだ理由を、小さな物語にしたものです。

その後、少女の行方は分かりません。
先のことは、綴られていないからです。





――――たとえばのお話、おしまい。