例えば、禁止：最果ての卵 // upas cironnup -ゆききつね-

例えば、禁止＞

これから始まるは、たとえばのお話。





その子は、様々なものを禁止されました。
偶然に目が合ってしまった、あの日からずっと。
そして、そのことに絶望することを禁止されています。

目覚めの朝。
さわやかを禁止されています。
だから、訪れる朝はいつもどんより。

ステキな朝食。
食べる時間を禁止されています。
だから、訪れる昼までいつも腹ぺこ。

楽しい時間。
笑うことを禁止されています。
だから、いつも退屈しています。

昼食の時間。
味わうことを禁止されています。
だから、食事はいつも味気ない。

仕事の時間。
満足することを禁止されています。
だから、どんな仕事をやっても達成できません。

団らんの時間。
家族を禁止されています。
だから、近所の光を背景に孤独を味わいます。

眠りの時間。
安眠を禁止されています。
だから、いつも闇の中でじっとしています。

終わりの時間。
終わることを禁止されています。
だから、永遠にこの流れは続きます。





――――たとえばのお話、おしまい。