これから始まるは、たとえばのお話。 たくさんの猫がいます。 なぜなら、人間が食べ物を分けてくれるからです。 ここに、二匹の猫がいます。 黒猫と三毛猫。とても仲の良い二匹です。 三毛猫は、他の猫たちと同じように人間から食べ物を貰っています。 黒猫は人間が信用できなくて、自力で食べ物を探しています。 今日は、いつも以上に食べ物を貰った三毛猫。 自分の力で飢えを凌ぐために、遠出をした黒猫。 彼らは、その日を境に再会することはありませんでした。 ある人間への視点。 商店街には沢山の野良猫が生息しています。 住民達が野良猫に残飯を与え、やがて住み着いてしまったのです。 その被害は、日に日に大きくなっていきます。 ゴミは荒らされ、糞尿の匂いが充満するようになりました。 そこで商店街から、駆除するように依頼が来ます。 その人間たちは、白衣を纏い、毒入りの餌を持って出かけました。 他の、ある人間への視点。 この付近は、猫が多いという噂があります。 運転をするときは、特に気をつける必要があります。 しかし、どれだけ気をつけても事故は起きてしまいます。 ほら。そこにも見たくないものが散らばっています。 誰かが轢いてしまった黒猫。 人間は、少しだけ悲しい気分になりながら、そこを通り過ぎました。 ――――たとえばのお話、おしまい。