これから始まるは、たとえばのお話。 真っ白な、一枚の紙があります。 青い雫が落ちました。 それは紙に広がり、海になりました。 一本の真っ直ぐな糸が落ちました。 それは水平線になり、空ができました。 緑の点が浮かび上がりました。 少しずつ大きくなって、森になりました。 いろんな色が生まれていきます。 紙のいたるところに、様々な動物が誕生しました。 大きな丸を書きました。 動物達は、不思議がって近づいてきます。 黒く塗りつぶしました。 何もかもを破壊するバクダンになりました。 スイッチを押しました。 カチ。ドカーン。 真っ白な、一枚の紙に戻りました。 黒い雫が落ちました。 それは紙に広がり、闇になりました。 枠を書きました。 もう、闇は外に出られません。 黒は、漆黒に染まっていきます。 どこまでも続く暗黒へ成長しました。 どこまども、どこまでも続きます。 枠の中という有限の世界に、無限に続く黒い世界。 何かが聞こえたような気がしました。 音なんかない世界に、永遠の曲が流れ始めました。 熱さと寒さを同時に感じました。 どちらでもあり、どちらでもない空気。 この世界を創ったカミサマは、これでいいと思いました。 ――――たとえばのお話、おしまい。