例えば、涙:最果ての卵 // upas cironnup -ゆききつね-

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ゆききつねいのち最果ての卵 > 22. 涙

例えば、涙

これから始まるは、たとえばのお話。





大陸から遥か離れた、小さな孤島。
そこに、悲しみの少年が一人で暮らしています。

少年は、世界中の悲しみを感じることができます。
共感して、少しでも悲しみを減らしてあげようと、涙を流すのです。


大きな音が聞こえました。
居眠り運転の車が、子供達の中へ突っ込んでいったのです。
体から血を流しながら、悲しみの少年は涙します。

叫び声が聞こえてきました。
小さないざこざで、愛し合った二人が別れてしまったのです。
心を軋ませながら、悲しみの少年は涙します。

嗚咽が聞こえてきました。
たくさんの人に親しまれた人間が、病気で急死してしまったのです。
体中の水分を使って、悲しみの少年は涙します。

強い風を感じました。
全てに絶望し、高いところから落下しているのです。
闇の中へ沈みながら、悲しみの少年は涙します。

誰かの鳴き声が聞こえてきました。
世界の悲しみを感じてしまって、ある少年は涙が止まらなくなってしまったのです。
何処かの誰かと一緒に、悲しみの少年は涙します。





――――たとえばのお話、おしまい。