例えば、額面:最果ての卵 // upas cironnup -ゆききつね-

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ゆききつねいのち最果ての卵 > 23. 額面

例えば、額面

これから始まるは、たとえばのお話。





道端に絵描きがいました。
ぼろぼろの服、ぼさぼさの髪、使い古された道具。
道行く人は、誰も見向きしませんでした。

絵描きは、紙幣の絵を描きました。
額面は、その国で使われているお金の、最小の単位でした。
それと同じ値段で売ろうとしましたが、売れませんでした。


別のあるところ。

男は破産しました。
全ての努力は、瓦礫と化しました。
何もかもを失い、道を彷徨っていました。

道の隅に絵描きを見つけました。
紙幣のような絵。
それに、何故か惹かれていきます。

ポケットに入っていた小銭で、絵を買いました。
もう一度だけ、頑張ってみよう。
男は立ち上がります。


少しの時が流れます。

男は、なんとか生活を取り戻しました。
そんなある日、部屋に飾ってあった紙幣の絵を見た友人は言いました。
これは、ものすごい価値があるのではないか。

鑑定してみました。
絵の額面からは想像できないほどの値がつきました。
男は言います。

これは、この絵に描かれた値段で買ったものだ。
売るならば、その値段で売る。
しかし、私は売るつもりは無い。気に入っているからだ。





――――たとえばのお話、おしまい。