これから始まるは、たとえばのお話。 生きた伝説とまでいわれる、素晴らしい鍛冶屋がいました。 彼の作る刀は、美と機能を兼ね備えた「究極」と称えられています。 旅装束に身を包んだ男が現れます。 噂を聞いた。俺に刀を作ってくれ。 鍛冶屋は全身全霊をかけて、1本の刀を造りました。 神々しく輝く姿は見るものを魅了し、煌めく刃は何者をもってしても止めることはできません。 隣の町で、大量殺人が起こりました。 一人残らず、惨殺されたといいます。 その隣の町でも、大量殺人が起こりました。 遠くへ出かけていた家族だけが生き残りました。 その家族は鍛冶屋に言います。 お前があんなものを造ったから、こんなことになったのだ、と。 鍛冶屋の首は、自分の造った刀によって胴体と切り離されました。 その家族は満足して帰っていきました。 ――――たとえばのお話、おしまい。