例えば、月裏:最果ての卵 // upas cironnup -ゆききつね-

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ゆききつねいのち最果ての卵 > 32. 月裏

例えば、月裏

これから始まるは、たとえばのお話。





一人の少女が、満月を眺めています。
ふと、思いました。
兎が餅つきしている裏では、何が起きているのだろう。

少女は、長い長い旅路を歩み始めます。
まがりくねった道。急な坂道。
それでも、とにかく歩きつづけました。

そして、月の裏側に到達しました。
生と死。永遠と有限。人間とニンゲン。神話と歴史。透明な白と、不透明な黒。
今まで見た事も無いものがたくさんありました。

家に帰った少女は、このことを両親に話しました。
たくさんたくさん話しました。
でも、なかなか分かってくれません。

友達に話しました。
近所の人に話しました。
やっぱり、分かってくれませんでした。

その夜、少女は不思議な夢を見ました。
月の兎が、手招きをしています。
これで、私は月の住民になれる!


もう一つの視点。


娘が突然、旅に出るといって、出て行ってしまいました。
しばらく経って、帰ってきます。
しかし、かつての娘とは別人のようでした。

訳のわからない話をします。
いや、訳は分かる。
けれど、それは禁忌として法やモラルと呼ばれる「何か」によって規制されています。

どうやら娘は、その話をいろいろなところでしているようです。
たくさんの苦情が来ました。
あんな危険な子供、処分してしまえ。と。

満月の夜、父親は眠っている娘の心臓にめがけて。
銀色の刃を突き刺しました。
何故か、安らかな寝顔でした。





――――たとえばのお話、おしまい。