これから始まるは、たとえばのお話。 少女は、ただ自分だけを信じて生きてきました。 真実は常に己の中にのみ存在する。 少女は、左の道を選びました。 みんなが、その選択を否定しました。 少女は、髪を短くしました。 みんなが、その髪型を否定しました。 少女は、おいしいものを食べました。 みんなが、それは不味いと否定しました。 少女は、夢を見ました。 みんなが、そんな夢は捨てろと否定しました。 少女は、話をしました。 みんなが、意見を押し付けて少女の考え方を否定しました。 少女は、好きな服を着ました。 みんなが、それは変だと否定しました。 少女は、歩いて出かけました。 みんなが、なぜ手を大きく振らないのかと否定しました。 少女は、眠りました。 みんなが、こっちに来いと睡眠を否定しました。 少女は、落ち込みました。 みんなが、全てを押し付け少女の気持ちを否定しました。 少女は、人形になりました。 何も考えない、何も思わない、かわいらしいお人形さん。 みんなが、いつものように否定します。 でも、痛くも何とも思いません。 ――――たとえばのお話、おしまい。