例えば、人形:最果ての卵 // upas cironnup -ゆききつね-

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ゆききつねいのち最果ての卵 > 33. 人形

例えば、人形

これから始まるは、たとえばのお話。





少女は、ただ自分だけを信じて生きてきました。
真実は常に己の中にのみ存在する。

少女は、左の道を選びました。
みんなが、その選択を否定しました。

少女は、髪を短くしました。
みんなが、その髪型を否定しました。

少女は、おいしいものを食べました。
みんなが、それは不味いと否定しました。

少女は、夢を見ました。
みんなが、そんな夢は捨てろと否定しました。

少女は、話をしました。
みんなが、意見を押し付けて少女の考え方を否定しました。

少女は、好きな服を着ました。
みんなが、それは変だと否定しました。

少女は、歩いて出かけました。
みんなが、なぜ手を大きく振らないのかと否定しました。

少女は、眠りました。
みんなが、こっちに来いと睡眠を否定しました。

少女は、落ち込みました。
みんなが、全てを押し付け少女の気持ちを否定しました。


少女は、人形になりました。
何も考えない、何も思わない、かわいらしいお人形さん。

みんなが、いつものように否定します。
でも、痛くも何とも思いません。





――――たとえばのお話、おしまい。