これから始まるは、たとえばのお話。 広い広い草原を駆け抜ける、一陣の風。 彼は、この草原の獣王です。 しなやかな動き。力強い動き。 見るもの全てを魅了します。 銃声。 彼は、ただの肉塊になりました。 獣王ステーキ。 人間の好奇心が作り上げました。 しかし、食べられる事もなく、ゴミ箱に捨てられました。 まずい。そんな理由。 たくさんのゴミの中。 獣王も、その一部となり、ゆっくり大地に還ろうとします。 消えていく意識の中で、何かを感じました。 たくさんのゴミ、それぞれの歩んできた道。 はじめ、獣王は悲しかった。 でも、たくさんの様様な人生の存在に気づきました。 やがて大地へと還り、みんなと一つになりました。 その瞬間、何かを感じた獣王は、しかし意識が消えました。 ――――たとえばのお話、おしまい。