例えば、獣王:最果ての卵 // upas cironnup -ゆききつね-

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ゆききつねいのち最果ての卵 > 35. 獣王

例えば、獣王

これから始まるは、たとえばのお話。





広い広い草原を駆け抜ける、一陣の風。
彼は、この草原の獣王です。

しなやかな動き。力強い動き。
見るもの全てを魅了します。

銃声。
彼は、ただの肉塊になりました。

獣王ステーキ。
人間の好奇心が作り上げました。

しかし、食べられる事もなく、ゴミ箱に捨てられました。
まずい。そんな理由。

たくさんのゴミの中。
獣王も、その一部となり、ゆっくり大地に還ろうとします。

消えていく意識の中で、何かを感じました。
たくさんのゴミ、それぞれの歩んできた道。

はじめ、獣王は悲しかった。
でも、たくさんの様様な人生の存在に気づきました。

やがて大地へと還り、みんなと一つになりました。
その瞬間、何かを感じた獣王は、しかし意識が消えました。





――――たとえばのお話、おしまい。