これから始まるは、たとえばのお話。 一匹の蛇がいました。 とても貪欲で、いつも何かを食べています。 その食欲は、とどまることを知りません。 ある日、ある国が丸呑みされてしまいました。 それでも蛇は食べることを止めません。 やがて大陸が姿を消しました。 次々と大陸が消えていきます。 海も飲みつくされました。 星を飲み込み。 太陽すら丸かじりしました。 宇宙に輝く星の数が、どんどん減っていきます。 もう、光っているものは、なにもありません。 蛇は大きく息を吸い込み、闇を食べ始めました。 無限と思われた闇も、ついになくなってしまいました。 他に食べるものはないか。 ……ほら、まだあるじゃないか。 蛇は己自身を喰らいつくしました。 そこには、純粋な「食欲」だけが残りました。 食欲が世界を侵食し。 食欲を含む世界すべてが、食欲によって食われてしまいました。 ここには何もありません。 この言葉すら、何の意味も無いほどに。 ――――たとえばのお話、おしまい。