例えば、貪欲:最果ての卵 // upas cironnup -ゆききつね-

upas cironnup -ゆききつね-

ショートカットメニュー

ゆききつねいのち最果ての卵 > 36. 貪欲

例えば、貪欲

これから始まるは、たとえばのお話。





一匹の蛇がいました。
とても貪欲で、いつも何かを食べています。

その食欲は、とどまることを知りません。
ある日、ある国が丸呑みされてしまいました。

それでも蛇は食べることを止めません。
やがて大陸が姿を消しました。

次々と大陸が消えていきます。
海も飲みつくされました。

星を飲み込み。
太陽すら丸かじりしました。

宇宙に輝く星の数が、どんどん減っていきます。
もう、光っているものは、なにもありません。

蛇は大きく息を吸い込み、闇を食べ始めました。
無限と思われた闇も、ついになくなってしまいました。

他に食べるものはないか。
……ほら、まだあるじゃないか。

蛇は己自身を喰らいつくしました。
そこには、純粋な「食欲」だけが残りました。

食欲が世界を侵食し。
食欲を含む世界すべてが、食欲によって食われてしまいました。

ここには何もありません。
この言葉すら、何の意味も無いほどに。





――――たとえばのお話、おしまい。