これから始まるは、たとえばのお話。 一人の少年が、静かに眺めていました。 もう、どれくらいの間、こんなことを繰り返してきたのか。 遠くから、ただ眺め続けるだけ時間。 まばゆい光が溢れ、人々の喧騒で賑わう街。 暖色のあかりの中で、あたたかい雰囲気に包まれた家庭。 少年のそばには誰もいません。 静寂だけが、ひっそりと付き添っています。 人々が見たら、きっとそれは「寂しい」と呼ばれるでしょう。 しかし少年は、それしか知らないので、寂しいというのがよく分かりません。 少年のそばに、星が数粒生まれました。 そして遠くへ流れていきました。 人々が見たら、きっとそれは「涙」と呼ばれるでしょう。 しかし少年は、ただ、綺麗だなと思うだけでした。 これからも、きっと続いていくのだろう。 遠くから、ただ眺め続けるだけ時間。 光あふれる世界を。 その影から。 一人の少年が、静かに眺めていました。 ――――たとえばのお話、おしまい。