例えば、不変:最果ての卵 // upas cironnup -ゆききつね-

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ゆききつねいのち最果ての卵 > 38. 不変

例えば、不変

これから始まるは、たとえばのお話。




世界が変わっていくのが、どうしても許せませんでした。


一歩ずつ、汗と努力を積み重ねて、やがて大きな塔が完成しました。
遠くまで見渡せる、とても立派なものでした。

少女は、塔を壊しました。
街の見た目が変わってしまったことが、許せませんでした。


かつては精鋭の戦士だった彼も、時間の流れにだけは逆らえませんでした。
一線を退き、後輩の育成に尽力しました。

少女は、戦士を殺しました。
最前線で戦えなくなった戦士を、許せませんでした。


どうして世界は、こうも変化しつづけてしまうのか。
少女はただ、変わらない毎日さえあれば、それでいいのです。

そう、時間が流れるから、世界は変わってしまう。
もっと簡単に、変化から逃れる方法が見つかりました。


丘の上の草原に、動かなくなった少女が静かに横たわっています。
時の流れから抜け出せば、もう変わることはない、はず。

それでも、世界は残酷に変わり続けます。
時間が止まったはず少女にも、変化は訪れます。


少女の着ている服が、どんどん汚れていきます。
すぐ横に咲いていた花が、種を飛ばし、やがて枯れてしまいました。

覚えていたはずだったことが、どんどん記憶の中から消えていきます。
少女の体は、もうそれが誰なのか分からないくらいに腐っていました。


何もかもが変わっていくのが、どうしても許せません。





――――たとえばのお話、おしまい。